北海道喉頭摘出者福祉団体 北鈴会

犬山教授-3


「頭頸部がんシリーズ」

3、口腔がん



口腔がんは、喉頭がんとならんで頭頸部がんの中では多い病気の1つです。口腔がんは、たくさんの発生部位があります。すなわち舌、口腔底、歯肉、硬口蓋(こうこうがい)、頬粘膜などです(図)。このうちもっとも多いのが舌がんです。舌がんのうち、もっとも多くみられるのが舌の側縁部です。次いで舌の下面です。

その原因としては、やはり過度の喫煙と過度の飲酒があげられます。そのほかに、口腔内の衛生状態が不良であることも関係しています。わが国ではがん全体をみると胃がんが一番多いことは世界的にもよく知られています。しかし国によっては口腔がんが発生頻度の上位を占める国もあります。その国とはインドです。インドではいわゆる紙巻タバコではなく、タバコを石灰などと混ぜて、これをビンロウの葉で包んで口の中に長時間入れておく習慣があります。そのためその部に一致して、がんが発生します。このことはタバコの発癌性を人体実験にて証明しているようなものです。

症状ですが、最初は白斑、小潰瘍、小腫瘤などとして発生します。痛みは伴う場合と伴わない場合があります。普通の口内炎であればすくなくとも1〜2週間の内には治りますが、治らない場合は耳鼻咽喉科でみてもらう必要があります。単なる口内炎の場合は指で触っても硬結を触れませんが、硬いしこりを触れたり、深い潰瘍がある場合は危険信号です。

また病気が進行すると顎の下のリンパ節が腫れたり、頸部の上方のリンパ節が腫れることもあります。もし、がんが疑われる場合は一部組織を採取して、顕微鏡でがん細胞があるかどうかを調べます。また症例によってはCTやMRIなどの画像診断も必要になります。

さて、治療ですが腫瘍の直径が2p以下で頸部のリンパ節が触れなければ、比較的小範囲の手術でも、放射線治療でも治る確立は高いといえます。腫瘍の直径が2〜4pで、深部までしこりがあり、しかも頸部のリンパ節が腫れていれば、一般的には手術を選択します。しかし直径が2〜3pで、あまりしこりがなく、しかも頸部リンパ節も触れない場合は、放射線治療(セシュウム針など)でも、手術でも大きな機能障害を残すことなく治療可能と考えます。

しかし、腫瘍が4p以上を越えている場合や、腫瘍が下顎の骨にも達している場合は、やはり拡大切除が必要になることが多いといえます。その場合は、舌は半分あるいはそれ以上の切除が必要となり、下顎も一部切除しますので、その範囲に応じた再建手術が必要になります。この場合は、若干言葉が不明瞭になりますが、日常生活に大きな支障を来すことはないと思います。

しかし、症例によっては舌を全部またはそれに近い切除を必要とする場合は、機能的にいろいろ問題を生じることもありますが、何とか会話が可能な方もいますし、中には電話もかけられる人もおり個人差があります。もう一つの問題点は誤嚥(食餌をとる時にむせてしまってのみ込めない)です。これも切除範囲と相関しますし、また高齢者では一般に起こりやすいといえます。このような状態であまり無理をしますと肺炎を併発し危険ですので、止むを得ず喉頭の摘出が必要になることもあります。

したがって自分で少しでもおかしいと思ったらなるべく早く耳鼻咽喉科の専門医を受診して下さい。