北海道喉頭摘出者福祉団体 北鈴会

永橋医師31


喉頭摘出患者に関する最近の手術


独立行政法人国立病院機構北海道がんセソター頭頸椰外科

医長 永橋立望



今回は、手術器具の変遷について書いてみます。

昨年、お知らせしたロボット手術、通称ダヴィンチというのは、大型の手術機械でした。内視鏡やロボットハンドなどで3Dモニターやコンピューターを使用してのロボット手術が、将来において日本全国の病院で、喉頭がん手術に使用できるようになると思います。
今回は、すでに日本の多くの病院で使われている新しい機械についてお知らせします。それは、エネルギーデバイスといわれる止血装置の事です。以前は、出血に際して、結紮による止血、電気メスでの止血が、確実で可能な方法でした。エネルギーデバイスは、超音波凝固切開装置のことで、元々は、腹部の内視鏡手術などで使用されてきました。組織を凝固しながら切開する手術器具で出血しやすい術野で、安全にほぼ無血の状態で手術が行えるとされています。超音波振動による摩擦熱で、血管やリンパ管などの管腔をシーリング、同時に組織を機械的に切断します。電気メスと比較すると低温で止血するので、周りへの熟での損傷が少なく術後の傷の回復が早いとされています。直径5oまでの血管に有効ですので、喉頭がん手術のほとんどの血管において止血可能です。止血に要する時問も少なく、手術時問が短縮し、出血量も減少します。実際に、当科では、術後の輸血は、ほとんどなくなりました。大変、便利な手術器具ですが、ダヴィンチをはじめ、ほとんどの機械が、米国製で高価なものです。

内視鏡手術でない、喉頭がん手術に使用できるようになったのも数年前からの事です。日本政府の成長戦略の中にも有りますが、医療器具の日本での開発が、自国民にマッチした製品で安くなおかつ輸出も可能な製品となりえます。いま、盛んに工学系との産学共同開発がすすめられています。10年一昔といわれますが、最近の手術における進歩は、目覚ましく、以前は、技術、コストの面で不可能とされていた事が、今後確実に実現して手術そのものが様変わりしてゆくでしょう。

今年は、北鈴会創立50周年ですが、100周年のときは、喉頭がんの治療、手術が、どのようになっているか予想もつかないところです。