北海道喉頭摘出者福祉団体 北鈴会

木元看護師31


一北鈴会の皆様へ一

市立旭川病院西3階病棟

看護師 木元史子



私が耳鼻咽喉科の混合病棟の配属になり、6年目を迎えました。

喉頭摘出術を受けられた患者さんの関わりの中から学びを書かせて頂きます。

喉頭摘出を受けられる患者様の多くは入院前より説明を受けられておりますが、緊急入院・手術となられた方は、宣告を受けてから、心の準備ができないまま治療が進められていきます。術前に説明をしても、実際の術後の状況や今後の治療・予後について、イメージができない方も多いのではないでしょうか。

術前にお話した時の声を思い出すと胸のつまるような気持ちになりました。声を失うという悲しみと絶望は、私たちの想像を超え、計り知れないものと感じました。

術後には気管孔造設による身体の変容や、コミュニケーション障害等の試練が訪れます。

筆談によるコミュニケーションは手間がかかるうえに意思をうまく伝えられず、ストレスからの怒りや、伝えるのを諦めてしまうなど意欲の低下のみられる方などもおりました。

更に現実を受け入れ難い状況の中、痰の吸引処置等、退院に向けての訓練で時間が過ぎていきます。

多くの方は平静を保っておりますが、心の中は葛藤の日々だったと存じます。

私たちの役割は、患者様の思いを傾聴し表出できるようにすること、不安のない療養生活や退院に向けての援助をすることです。看護スタッフと共に倫理カンファレンスを行い、その方にとって最善の援助ができるように心がけておりますが、これでよかったのか、もっとこうしておけばよかった等反省の日々でした、しかし、定期受診や、人院などで再び患者様とお会いした際に、電気発声機を使用し笑顔で会話をする姿や生き生きと日常生活を送られている姿を拝見した際には、とても嬉しくなり、患者様ご自身の地道な努力と強い精神力に感銘を受けたこともしばしばです。

その背景には、同じ境遇で試練を乗り越えられた「北鈴会」の皆様の存在とサポートが大きく関与していることを痛感しました。

仲間と共に励む発声訓練などが、患者様の生きる勇気や希望につながり見事に試練を乗り越えられているのだと実感します。

今年「北鈴会」創立50週年を迎えられ、皆様のご協力に感謝するとともに、更なる会の発展と皆様のご健闘とご活躍をお祈り申し上げます。