北海道喉頭摘出者福祉団体 北鈴会

前田助教32


(医療と福祉からのメッセージ)


北鈴会の皆様へ


北海道医療大学リハビリテーション科学部 言語聴覚療法学科

助教 前田秀彦



 いつも北鈴会の皆様にはお世話になっております。
現在、私は骨伝導を利用した食道音声支援用の携帯型拡声器の開発に取り組んでおります。食道音声は、習熟すると明瞭な発声が出来ることは皆さんもご存知かと思います。しかし、その音量の小ささが会話時に不便を生じさせることが多いのではないかと思われます。
 食道音声用の発声支援装置は、ビバボイスという商品名で製品化されています。これは、1994年から5年間、通産省のプロジェクトで開発されたもので、食道音声で発した声をマイクで拾い、音声を増幅します。そして、増幅された音声がスピーカーから流れるという仕組みになっています。しかし、マイクを手で持ったり、ヘッドセットを頭に装着したり、スピーカーを腰にベルトで巻いて装着したり、そして何より周囲の雑音も音声と一緒に増幅してしまうという弱点が残っていました。
 我々が開発している、骨伝導を利用した携帯型拡声器は、現在、市販されている発声支援装置の弱点を補うものです。骨伝導を利用し音声を拾うマイクロフォンは、周囲の雑音を拾いにくいという長所があります。
しかし、皮膚を経由して音声を取り出すのでこもった感じの音声になり、聞き取りづらいものになります。
我々は、皮膚を経由しないで直接的に骨などから音声を取り出そうという試みを行っています。現在の我々の研究では、皮膚を経由しないで直接的に骨伝導で音声を取り出すと、音声のこもり感が少なくなり、音声が明瞭になること。また、騒音環境下においては、周囲の雑音を拾いにくいという骨伝導マイクロフォンの利点を生かしたまま、自分の声を増幅できるということが分かりました。特に、騒音環境下における音声の明瞭性を調べた結果は、騒音の無い状態で録音した音声の明瞭性とほとんど変わらないという良好な結果が得られました。
 今後、携帯型拡声器開発の段階では、北鈴会の会員の皆様にご協力を頂くことが多いと思われます。是非、ご協力して頂けると助かります。また、当学科の学生と共に、発声教室の方へお邪魔したいと考えております。喉頭摘出後のリハビリテーションが皆様の篤志的な活動によって支えられているということが、少しでも学生たちに伝われば良いと考えております。
 最後になりましたが、北鈴会の皆様の益々のご健勝を心よりお祈り申し上げます