北海道喉頭摘出者福祉団体 北鈴会

永橋医師32


喉頭摘出患者に関する最近の治療




独立行政法人国立病院機構北海道がんセソター頭頸椰外科

医長 永橋立望



 喉頭全摘出となる疾患は、「喉頭がん」「下咽頭がん」が代表的です。治療法としては、手術、放射線治療が以前から行われてきていますが、最近では放射線治療と抗がん剤の同時併用や、前後に投与する治療法で喉頭温存の可能性を高めることが可能となっています。

 数年前より、放射線治療と抗がん剤の同時併用に使用できる薬として新たに、分子標的薬と呼ばれる新薬が登場しました。
 近年、他のがんの治療において、様々な分子標的薬が使用されてきたのですが、喉頭などの頭頚部領域においても、はじめて、この新薬が、国に承認されて保険適用となり使用できるようになりました。以前の抗がん剤と異なる点は、副反応と呼ばれる、有害事象の出方にあります。嘔吐、脱毛、腎臓の障害などは、すくないのですが、全身の皮膚の障害などが出る事が多いです。特に手足や皮膚の延長である爪に出ますと、靴が履けなくなる事があります。これは、分子標的薬が、有効な部位が、腫瘍の他に正常皮膚にもあるからですが、対処法もありますので、主治医にご相談ください。また、皮膚症状が出やすい場合は、腫瘍にも効果がでやすいともいわれていますので、治療効果に期待が持てます。

 最近は、分子標的薬を代表とする新薬が、続々と開発されており、将来的には、「喉頭がん」「下咽頭がん」にも、もっと多くの分子標的薬が、使用できる事になると思います。

 また、NHKでも放送されておりましたが、分子標的薬とは異なる作用の新薬、免疫細胞の活動の抑制を解除する事により、自己免疫細胞の働きで腫瘍を縮小させる免疫療法の薬も開発されつつあります。数年後には、頭頚部がんをはじめ、がん治療が大きく変化するかもしれません。