北海道喉頭摘出者福祉団体 北鈴会

がんセンタ36


喉頭摘出患者に関する最近の治療


独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター
頭頸部外科医長 永橋 立望


「喉頭がん」の治療法としては、手術、放射線治療が以前から行われてきています。ここ数年においても大きな変更は、ありませんでした。近年癌の予防の観点で、禁煙活動が、様々な形でおこなわれております。

喉頭癌は、喫煙と関係することが知られていますので、禁煙活動の普及は、喉頭癌発生の予防にも貢献していると考えられています。現実に、米国では、タバコ消費量の減少とともに喉頭癌が減少しています。昨年も書きましたが、受動喫煙対策の点から、東京オリンピツクを前にして、飲食店での禁煙が、実現しつつあります。屋内喫煙が禁上になるにつれ、路上喫煙が増加する可能性が指摘されていますが、すでに東京の千代田区は、路上喫煙が全面禁上にされております。

札幌の現状は、札幌市ポイ捨て等防止条例にて札幌市内全域でのタバコのポイ捨て禁止、市内中心部では、喫煙制限区域で、歩きタバコの禁止、携帯灰皿での喫煙の禁止となっております。国の健康増進法改正案で、多くの人が利用する施設の屋内が原則禁煙になります。春には、改築議会場での喫煙室の造設を反対する市民団体の報道もありました。

電子タバコには、ニコチンが含まれていませんが、加熱式タバコは、ニコチンが含まれています。発ガン性は、まだ明らかにされていませんが、加熱式タバコは、健康増進法改正案で区別されています。

「喉頭がん」の治療としては、放射線治療と抗がん剤の同時併用や、抗がん剤を放射線治療の前後に投与する治療法が、喉頭温存の可能性を高めることが認められ、標準治療の一つになっています。しかし、合併症の状況により、抗がん剤を併用できない時もあります。また、副作用を心配して、抗がん剤治療を選択なさらない患者さんもいらっしやいます。

新たな選択肢としての分子標的薬と呼ばれる新薬が登場しており、使用開始後数年経過しております。ただし、このお薬にも、従来の抗がん剤と異なる、副作用があります。

ノーベル賞を受賞した免疫チェックポイント阻害剤が、2017年春より治療に使用可能となりました。ただし、現時点では、抗がん剤使用後の再発時での使用となっております。従来の免疫療法や分子標的薬とは異なる作用の薬で、免疫細胞の活動の抑制を解除する事により、自己免疫細胞の働きで癌を縮小させるという免疫の薬です。この薬にも、副作用があり、癌以外の自分の体を免疫細胞が攻撃することにより、様々な症状が出現する事があります。

手術においては、ロボット手術といわれる、通称ダヴィンチという手術機械が、北海道でも多く導入されています。ロボット手術は、世界的には咽喉頭癌に対する標準治療のひとつとなってきており、国内において昨年8月に頭頸部外科領域(経口手術)が承認されましたので、喉頭がんの手術では、使用できるようになりましたが、がんの部位、進行度など制限がありますので、今後の課題と言えます。

喉頭全摘後の発声法としてのボイスボタンが普及していますが、漏れなどのために、定期的な交換の必要性があり、手術後から何年たっても通院が必要になるという問題を抱えています。前々回のバージョンアップ後、漏れが早期に認め頻回に交換が必要になることが多くなった印象でしたが、昨年に再度バージョンアップしております。効果のほどは、個人差があるようです。