北海道喉頭摘出者福祉団体 北鈴会

北大36


北鈴会のみなさまへ

北海道大学大学院医学研究院耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室

教授 本間明宏

 

昨年は、北鈴会の指導員研修会にお招きいただき、講演をさせていただきありがとうございました。みなさまが熱心に聴いてくださり大変うれしく思いましたし、みなさま方のためにもっと努力しなくてはと気持ちを新たにしました。現在、ちょっとしたきっかけから喉頭摘出者の方のための本を翻訳しています。

アメリカの医師で下咽頭癌になり放射線治療を受けたものの再発し、下咽頭と喉頭を摘出し、そして遊離皮弁で咽頭の再建手術を受けた方がおり、その方が書いたものです。彼は、アメリカの耳鼻咽喉科の学会で代用音声で時々講演をしており、私も拝聴したことがありますし、”My Voice(私の声)”という自分の闘病記を書いた本も読んだことがありました。私のことをどこで知ったのかわかりませんが、私を含め何人かの日本の耳鼻咽喉科医に彼から「自分が書いた喉頭摘出者の方のための本を日本語に翻訳して日本の喉頭摘出者に読んで欲しい」と直接メールが来ました。すでにもう13の言語に翻訳されているとのこと。原文を見るとこれは日本の喉頭摘出者にも役に立つに違いないと思いましたが、200頁近い大作で翻訳には莫大な時間がかかるなあ……と思っていました。数日後、昔から懇意にしている神戸大耳鼻咽喉科の丹生健一教授と会う機会があり話していたところ、丹生先生にも同じメールが届いていて私と同じ気持ちでいたとのこと。二人でなんとかできないか考え、まず、丹生先生の知り合いで英語に堪能な女性がいるので彼女に相談してみましょうということになりました。数日後、その方が翻訳を快諾してくれたと連絡ありました。彼女は医学には素人なので彼女が訳したものを私と丹生教授が修正することで話がまとまりました。

何章かの翻訳が終わったら私に送られてきて、北大のもう一人の医師、丹生教授と二人でチェックする作業を繰り返しました。翻訳してくれた方は最初は翻訳にかなり苦労されていたようですが、後半になると喉頭や喉頭摘出後の状態の理解が深まったようでした。私は喉頭摘出した多くの患者さんを約30年診てきたので、患者さんの苦労や不安はある程度は理解していたつもりでしたが、翻訳作業で初めて知ったことも多くありました。この経験をこれからの診療に役立てたいと思っております。

5月の連体で翻訳作業が終わりました。現在、全体のチェックをしており今年中には日本頭頸部癌学会のホームページにて無料で公開される予定です。喉頭摘出された方は高齢の方が多くインターネットを使わない方もいらっしゃると思い、印刷物として出せないかも検討中です。医師である著者が、世界中の喉頭を摘出した人の役に立ちたいという崇高な気持ちで書いた本を日本の患者さんに紹介できることを大変うれしく思っています。北鈴会のみなさまにも少しでもお役に立てれば幸いです。

北鈴会のますますのご発展、そして、みなさまのご健勝を心よりお祈り申し上げます。