北海道喉頭摘出者福祉団体 北鈴会

市立旭川医師35


当科での喉頭摘出患者におけるボイスプロテーゼ使用の現況


市立旭川病院耳鼻咽喉科
院長 安川真一郎

  喉頭摘出患者における発声法はいくつかありますが、近年普及しているものとしてシャント発声が挙げられます。この発声法のためには、手術によって気管と食道の間に孔を造設し、そこにボイスプロテーゼと呼ばれる小さなシリコーン製器具を留置する必要があります。シャント発声は、喉頭全摘出術後の声としては、比較的声の質が高く、容易に習得することができると考えられています。しかし難点もあります。具体的には、孔の拡大やプロテーゼの劣化による漏れ、プロテーゼの感染などです。そのため、ボイスプロテーゼは定期的な交換の必要性があるとされています。

  現在、当科では3名の喉頭摘出患者に対してボイスプロテーゼの定期交換を行っております。推奨される交換の頻度は文献により幅がありますが、3〜4ケ月がひとつの目安とされており、当科としてもそれにならっております。

  この定期交換を怠ると、プロテーゼに真菌感染が起きてシャント発声の中止を余儀なくされることがあります。また、長期間留置しているとプロテーゼの材質が劣化し、交換時に砕けてしまい、その砕けた一部が食道や気管に落ちることがあります。食道に落ちた場合は数日で排便と一緒に体外へ排出するとされておりあまり問題ではないのですが、気管に落ちた場合は気道閉塞により窒息をおこす可能性があるため、迅速な対処が必要とされる危険な状態となります。また、長期留置によリプロテーゼ周囲から漏れが発生するともされています。また、プロテーゼが閉塞しないように毎日の掃除も必要とされています。

  このように、ボイスプロテーゼの使用には毎日の、そして定期的なメンテナンスが必要で、患者様にはいささか負担となるかと思われます。しかし、やはり失った声を比較的容易に習得できるということは大変な利点であり、今後ますます普及していくと思われます。

  ボイスプロテーゼを使用されている患者様は、トラブルの際はかかりつけの耳鼻科医にすぐに相談をすることをお勧めいたします。皆様がよりよい声で生活できるよう、私たちも手助けさせていただきます。