北海道喉頭摘出者福祉団体 北鈴会

北大35


北鈴会のみなさまへ

北海道大学大学院医学研究院耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室

教授 本間明宏

  昨年(平成29年)11月に福田 諭名誉教授の後任として北海道大学大学院医学研究院耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室教授に就任いたしました。

  私は、ずっと頭頸部がんを専門にしてきましたので、北鈴会のみなさまのなかにはお会いしたことがある方も多くおられますし、また、私が手術させていただいた方もいらっしゃいます。改めて、これからよろしくお願いいたします。

  病気のためとはいえ喉頭を摘出せざるを得なかったことで、みなさまの人生は手術により大きく変わってしまっただろうと思います。私たち耳鼻咽喉科頭頸部外科医にとって″喉頭温存気つまり喉頭を摘出しないで治すというのは、昔からの永遠の目標です。喉頭を取らずに治す治療、具体的には腫瘍を切除しつつも喉頭を温存し発声できるような手術や、手術をしないで放射線治療と抗がん剤などの薬物と併用した治療の開発などに以前から取り組んでおります。 一部の患者さんではそれが可能となりましたが、やはり喉頭を摘出せざるを得ない患者さんも多数いらっしゃるのが現状であります。喉頭を摘出した後の代用音声について、気管―食道シャントを導入するとともに、より良い人工喉頭の開発などに取り組んでおります。東京大学、医療機器会社と共同開発している人工喉頭は近い将来発売できる見込みも出てきました。

  また、本誌の第33号に旭川医大の原渕教授が書かれておりますが、免疫チェックポイント阻害薬のオプジーボ●が昨年3月から喉頭がんなどの頭頸部がんでも使えるようになり、これからがんの治療全体が大きく変わりそうな状況になってきました。そして、ロボット手術は泌尿器科領域では日本でも広く行われていますが、中咽頭がんに対しては欧米ではすでに広く行われております。日本でも数年以内に行えるようになりそうです。頭頸部領域でのロボット手術の長所は、口から細長い器械を何本も入れて、解像度の良い内視鏡で見ながらいろいろな角度から自在に操作できることです。これが可能なのは一部の頭頸部がんに限られそうですが、今までは見づらく操作しにくいために大きく切って大きく取っていたのが、口から小さく取ることが可能となりそうです。このようにがんの治療も大きく変わってきております。

  頭頸部がんは私のライフワークで、今までも患者様から多くのことを学んできました。これからも一生懸命に取り組んでまいりますので、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。

  北鈴会のますますのご発展、みなさまのご健勝を心よりお祈り申し上げます。