北海道喉頭摘出者福祉団体 北鈴会

旭川医大医師34


北鈴会の皆様へ


旭川医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科
医師 林 隆介


 北鈴会の皆様はじめまして。旭川医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科の林隆介と申します。2年間の初期臨床研修を旭川医科大学病院で行い、半年間旭川厚生病院へ勤務し、その後は旭川医科大学病院へ戻り、現在は医師4年目となります。研修医の頃に、喉頭摘出術を受けられる患者様をはじめて担当させていただいた際に、北鈴会の存在を知りました。声を失う喉頭摘出術を受ける、という決断はとても大きなもので、私たち医療スタッフが医学的な側面から説明するだけでは決断できない方も少なくありません。北鈴会の方との面談により、術後の生活について具体的なイメージができ、上手に声を出してお話されている姿をみて、手術への不安が軽減され手術を受容される方もおり、北鈴会の皆様には大変お世話になっております。

 喉頭摘出術の適応となる疾患は、喉頭癌、下咽頭癌が代表的ですが、近年医学の進歩により様々な治療が行われるようになってきました。治療の基本は腫瘍の大きさや全身状態に合わせて、「手術」、「化学療法(抗癌剤)」、「放射線療法」を単独または同時併用や、前後に組み合わせることによって行います。当科では放射線科と協力し、腫瘍を栄養する血管に直接抗癌剤を投与する超選択的動注化学療法に放射線治療を組み合わせる治療を行っているのが特色で、 一昔前に比べると手術による治療は減少しております。しかし進行癌であった場合や腫瘍の種類によっては喉頭摘出術が第一に推奨されることもあり、いまだに非常に重要な手術の一つであります。また、近年頭頸部領域でも抗癌剤の一つである「分子標的薬」という新薬が続々と開発、保険適応になっており、癌治療において一つの転換点を迎えております。

 大学病院は教育の場でもあり、医学部5、6年生の学生や研修医が外来や病棟診療の場に立ち会っております。実際に食道発声や電気発声の仕方などを見せていただき、北鈴会の喉頭摘出患者様に対するサポート体制についてお話を聞かせていただく機会もあるかと思います。とても感銘を受ける学生もおり、良い機会となりますので、今後とも教育面でもご協力いただければ幸いです。

 これからも北鈴会の方々には喉頭摘出術を受けられる患者様のサポートをお願い申し上げるとともに、私も皆様とともに患者様がよりよい治療を受けられるように微力ながら貢献していければと思います。