北海道喉頭摘出者福祉団体 北鈴会

がんセンタ34


喉頭摘出患者に関する最近の治療


独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター
頭頸部外科医長 永橋 立望

「喉頭がん」の治療法としては、手術、放射線治療が以前から行われてきています。近年でも大きな変更はありません。癌の予防分野において、禁煙活動が近年様々な形でおこなわれております。喉頭癌は、喫煙と関係することが知られていますので、禁煙活動の普及は喉頭癌の予防にも貢献していると考えられています。東京オリンピックと関係して、飲食店での禁煙も検討されている状況です。

治療としては、放射線治療と抗がん剤の同時併用や、抗がん剤を放射線治療の前後に投与する治療法が、喉頭温存の可能性を高めることが認められ、標準治療の一つになっています。しかし、合併症の状況により、抗がん剤を併用できない時もあります。また、副作用を心配して、抗がん剤治療を選択なさらない患者さんもいらっしゃいます。新たな選択肢としての分子標的薬と呼ばれる新薬が登場しており、使用開始後数年経過しております。ただし、このお薬にも、従来の抗がん剤と少々異なりますが、副作用はあります。

また、昨年、数年後には使用できるようになるかもしれませんと書いた免疫チェックポイント阻害剤が、2017年春より保険適用となり、治療に使用可能となりました。ただし、現時点では再発時での使用となっております。従来の免疫療法や分子標的薬とは異なる作用の薬で、免疫細胞の活動の抑制を解除する事により、自己免疫細胞の働きで癌を縮小させるという免疫の薬です。この薬にも副作用があり、癌以外の自分の体を免疫細胞が攻撃することにより、様々な症状が出現する事があります。

手術においては、ロボット手術といわれる通称ダヴィンチという手術機械が、北海道でも多く導入されていますが、現時点では健康保険の適応がないため、喉頭がんの手術では使用できません。将来においては、口の中から喉頭癌を摘出する手術も実現すると予想されています。

 喉頭全摘後の発声法としてのボイスボタンは、かなり普及していますが、漏れなどのために、定期的な交換の必要性があり、手術後から何年たっても通院が必要になるという問題を抱えています。