北海道喉頭摘出者福祉団体 北鈴会

北大34


喉頭外科の歴史と展望

北海道大学名誉教授・北海道医療大学特任教授

  福田  諭


 この北鈴会に最も近い学会の1つである第29回日本喉頭科学会総会・学術講演会が4月6日〜7日岩手県盛岡市(会長¨岩手医大 志賀清人教授)で開催されました。学会のメインテーマは「喉頭科学と地域医療」でした。

 この学会で、私どもの教室の准教授を長らく務め、現在横浜市立大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学の主任教授である折舘伸彦先生の1時間の講演の司会を務める機会がありました。北大で育った折舘教授の司会を務めるのは私としては大変嬉しい限りで、講演のテーマは「喉頭外科の歴史と展望」でした。私の前任であられた犬山征夫名誉教授は、いわゆる「医史学」の大家でもありこの領域では極めて造詣が深く、私もその薫陶を受け色々勉強させて頂きました。喉頭全摘術を1873年初めて行ったウイーン大学Billroth教授については以前本誌に書かせて頂きましたが、その流れをくみ、折舘教授もこの分野では大変造詣が深いものがあります。彼の講演の最初のスライドはこうした教室の流れをくんだもので、Billroth教授の外科講義における熱血的指導ならびに最初の喉頭全摘術の文献のトップページと摘出標本スケッチでした(写真-1)。これを見ただけでもBillroth教授の精力的な雰囲気がひしひしと伝わってきます。

 講演は、こうした歴史的背景をベースに、今後の喉頭外科のあるべき姿を模索したもので、ただの歴史的事実の羅列に終わらず大変素晴らしいものでした。

 喉頭全摘術、喉頭部分切除術や良性腫瘍における喉頭外科手術において、エビデンスに基づいた標準的術式を確立すべきであるといった内容でした。私が在任中臨床のメインテーマの1つにしてきたナビゲーション手術においても、勘からの脱却、名人芸からの脱却、1つ1つ決められた手順を淡々とこなしていくインテリジェント手術などが言われてきましたが、より繊細な喉頭外科手術においても、こうしたエビデンスに基づく標準的術式の確立と中長期成績の更なる検討が必要であると考えられます。終了直後、折舘教授、本間明宏北大准教授、私で記念写真も撮り大変良い時間を過ごしました(写真-2)。

 話は変わりますが、私は約40年(学生時代を入れると50年)在籍した北海道大学を、本年3月31日をもって定年退職致しました。在職中は北鈴会の皆様に大変お世話になり誠に有り難うございました。7月1日から北海道医療大学特任教授として勤務しておりますので、今後ともどうぞ宜しくお願い致します。

 最後になりますが、本会の益々のご発展を心より祈念致しております。