北海道喉頭摘出者福祉団体 北鈴会

がんセンタ39


喉頭摘出患者に関する最近の治療


独立行政法人国立病院機構 北海道がんセンター頭頸部外科

医長 永 橋 立 望


2020年より、本道でも発症が確認された新型コロナ肺炎は、2022年になって、落ち着いたように見えましたが、この原稿を書き始めた時に、『BA・5』の感染の拡大が懸念される状況となっております。

今後の感染状況が悪化しないことを祈っております。

「喉頭がん」の治療法としては、手術、放射線治療が以前から行われてきています。ここ数年においても大きな変更は、ありませんでした。近年癌の予防の観点で、禁煙活動が、様々な形でおこなわれております。

新型コロナ肺炎の予防のため、マスク着用が普及した事により、路上喫煙をはじめ通常の喫煙も減少しているように感じます。喉頭癌は、喫煙と関係することが知られていますので、マスクの普及は、ある一面で喉頭癌発生の予防にも貢献していると考えられます。

「喉頭がん」の治療としては、放射線治療と抗がん剤の同時併用や、抗がん剤を放射線治療の前後に投与する治療法が、喉頭温存の可能性を高めることが認められ、標準治療の一つになっています。しかし、合併症の状況により、抗がん剤を併用できない時もあります。また、副作用を心配して、抗がん剤治療を選択なさらない患者さんもいらっしゃいます。

ノーベル賞を受賞した免疫チェックポイント阻害剤も、2017年春より治療に使用可能となっています。

ただし、現時点では、抗がん剤使用後の再発時での使用となっております。従来の免疫療法や分子標的薬とは異なる作用の薬で、免疫細胞の活動の抑制を解除する事により、自己免疫細胞の働きで癌を縮小させるという免疫の薬です。この薬にも、副作用があり、癌以外の自分の体細胞を免疫細胞が攻撃することにより、様々な症状が出現する事があります。

また、同様な薬が、異なる条件で使用可能となっています。

手術においては、ロボット手術といわれる、通称ダヴィンチという手術機械が、北海道でも多く導入されています。喉頭がんの手術でも、ロボット手術は使用できるようになりましたが、がんの部位、進行度など制限がありますので、今後の課題と言えます。

また、ロボット手術以外でも、口から行う手術方法での摘出術も保険で認められるようになりました。

喉頭全摘後の発声方法として、電気喉頭、食道発声以外にボイスボタンが普及していますが、気管への漏れなどのために、定期的な交換の必要性があり、手術後から何年たっても定期的な通院、交換の費用が必要になるという問題を抱えています。漏れを少なくするため、数回のバージョンアップが行われていますが、効果のほどは、個人差があるようです。

当院、北海道がんセンターも改築が完成し、広いエントランスと駐車場となっております。改築中と異なり、駐車場に十分な余裕があり、患者さんも便利になったと喜んでいただいております。ただし、今だに新型コロナ対策があり、新規受診は他科を含め、予約が必要な状況です。