北海道喉頭摘出者福祉団体 北鈴会

札幌医大39


北鈴会の皆様へ

札幌医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座

教授 高 野 賢 一


 北鈴会の皆様におかれましては、ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。新型コロナウイルス感染症はいまだ収束せず、北鈴会の皆様におかれましても安心して社会生活が送れない日が続いているのではないかと思われます。

さて、最近になって「光でがんを治す」治療法について、マスコミなどを通して見聞きしている方も多いのではないでしょうか。「光免疫療法」といって、がん細胞にだけ選択的に結合する物質(抗体)に、近赤外線があたると化学反応を起こす物質をつけて注射します。そこに人体には無害である近赤外光線を体の外から照射すると、風船が破裂するようにがん細胞だけを死滅させるという、新たながん治療法です。

これまで、がんの治療には、手術・放射線・抗がん剤・免疫療法の4つがありましたが、第5のがん治療法として注目されています。国内ではあの有名な楽天グループの後押しもあり、頭頸部がんに対する光免疫療法が保険適用となり、当科でも光免疫療法を開始するところです。 一見、夢のような治療法ではあるのですが、なかなか一筋縄ではいかないのが、がん治療です。この治療法にもまだまだ課題が多いのが現実です。がんとの戦いに終わりは見えませんが、こうして新しい治療法が出てくることは、患者さんにとって福音となりますし、われわれ医療者に取っても選択肢=武器が増えることは喜ばしいことです。次の「北の鈴」には、また新しい治療法などを書けるのではないかと思っておりますし、医学者としてわれわれも努力を続けてまいります。

末筆ではございますが、北鈴会の皆様のなお一層のご健勝とご多幸をお祈り申し上げます。