北海道喉頭摘出者福祉団体 北鈴会

旭川医大39

北鈴会の皆様へ


旭川医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座

医員 佐藤遼介

北鈴会の皆様におかれましては、ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。

この数年は新型コロナウイルス感染症の流行により、世界的に医療や社会に劇的な変化を生じさせました。当科においても外来診療の制限がかかったり受診が困難な方がいらっしゃったりと大きな影響がありました。最近はコロナワクチンの普及もあり、従来の外来に戻りつつある印象もあります。まだまだ感染の再拡大の可能性もありますが、医療の質を落とさないように日々状況の変化に対応しながら診療にあたっております。まだ新型コロナウイルス感染症により様々な制約があるなか、北の鈴発刊に携わり皆様の活発な活動や新しい会員の方へのご指導の様子を知ることができ大変嬉しく思います。今回は近年の頭頸部癌治療の様子や当科での実際の現状についてお話したいと思います。

近年のがん治療は目覚ましい進歩を遂げており、手術であれば低侵襲手術(頭頸部領域であれば内視鏡手術やロボット手術)、薬物療法であれば免疫チェックポイント阻害剤などのがん免疫療法、放射線療法であれば陽子線治療などの新規治療が注目され良好な治療成績が報告されております。当科においてもキイトルーダなどの新規薬剤の登場により、頭頸部癌に対する選択肢が広がって来ていることを実感しております。また癌自体の治療だけでなく、患者様の生活の質を維持しながら治療を行っていく点においても医療の進歩を感じます。当科では必要に応じて緩和ケア科や栄養サポートチームの助けを借りながら診療にあたっています。状況に合わせた鎮痛薬の管理だけでなく、それぞれの患者さんの栄養状態を評価し栄養剤や食事形態の工夫などといった対応を行っています。栄養状態改善や疼痛の良好なコントロールにより治療の成績向上だけでなく、生活の質の向上も期待されます。また当科では上腕ポートという腕にポートという小さな点滴用の器具を埋め込み、外来でも安全に抗がん剤を継続できるようにする処置を行っております。従来、抗がん剤投与は基本的に入院でしか行なえませんでしたが、上腕ポートの登場によって外来に通院しながら抗がん剤を投与できる選択肢も出てきました。今後も癌治療だけでなく患者様の普段の生活に寄り添った治療を続けて参ります。

一方で近年は手術治療の重要性も見直されてきています。化学放射線療法の普及により喉頭摘出術の頻度は減少しておりましたが、抗がん剤の効果を予想する方法も確率されてきたこともあり、やはり従来の手術治療の方が良好な治療効果を期待できる症例が存在することがわかってきました。当科でもより高い治療効果が得られるように、手術治療も含めて適切な治療方針を患者様と相談しながら決定しております。

昨年度は合計4例の喉頭摘出術を施行しており、今後も手術治療は重要な選択肢であると考えております。

今後もよりよい治療のため邁進していきますので、北鈴会の皆様には変わらずご助力いただけましたら幸いです。

最後になりましたが、皆様の日々のご協力に心より感謝申し上げるとともに、今後とも北鈴会のますますのご発展と皆様のご健勝を御祈念申し上げます。