北海道喉頭摘出者福祉団体 北鈴会

がんセンタ38


喉頭摘出患者に関する最近の治療


独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター
頭頸部外科医長 永 橋 立 望


 2010年より、本道でも発症が確認された新型コロナ肺炎は、翌2021年になっても感染が継続しており、本年5月頃からは本道では、大変な状況でした。この原稿を書いている、6月末頃には、緊急事態制限も解除され、感染者数、重傷者数も減少がみられ、安堵している次第です。

 「喉頭がん」の治療法としては、手術、放射線治療が以前から行われてきています。ここ数年においても大きな変更は、ありませんでした。近年癌の予防の観点で、禁煙活動が、様々な形でおこなわれております。新型コロナ肺炎の予防のため、マスク着用が普及した事により、路上喫煙をはじめ通常の喫煙も減少しているように感じます。喉頭癌は、喫煙と関係することが知られていますので、マスクの普及は、ある一面で喉頭癌発生の予防にも貢献していると考えられます。

 「喉頭がん」の治療としては、放射線治療と抗がん剤の同時併用や、抗がん剤を放射線治療の前後に投与する治療法が、喉頭温存の可能性を高めることが認められ、標準治療の一つになっています。しかし、合併症の状況により、抗がん剤を併用できない時もあります。また、副作用を心配して、抗がん剤治療を選択なさらない患者さんもいらっしゃいます。

 新たな選択肢としての分子標的薬と呼ばれる新薬が登場しており、使用開始後数年経過しております。ただし、このお薬にも、従来の抗がん剤と異なる、副作用があります。

 ノーベル賞を受賞した免疫チェックポイント阻害剤が、2017年春より治療に使用可能となっています。ただし、現時点では、抗がん剤使用後の再発時での使用となっております。従来の免疫療法や分子標的薬とは異なる作用の薬で、免疫細胞の活動の抑制を解除する事により、自己免疫細胞の働きで癌を縮小させるという免疫の薬です。この薬にも、副作用があり、癌以外の自分の体を免疫細胞が攻撃することにより、様々な症状が出現する事があります。

 また、キイトルーダという、同様な薬が、条件つきで使用可能となりました。

 手術においては、ロボット手術といわれる、通称ダヴィンチという手術機械が、北海道でも多く導入されています。ロボット手術は、世界的には咽喉頭癌に対する標準治療のひとつとなってきており、国内においても承認されましたので、喉頭がんの手術では、使用できるようになりましたが、がんの部位、進行度など制限がありますので、今後の課題と言えます。

 また、口から行う手術方法での摘出術も保険で認められるようになりました。

 喉頭全摘後の発声方法として、電気喉頭、食道発声以外にボイスボタンが普及していますが、気管への漏れなどのために、定期的な交換の必要性があり、手術後から何年たっても定期的な通院、交換の費用が必要になるという問題を抱えています。漏れを少なくするため、数回のバージョンアツプが行われていますが、効果のほどは、個人差があるようです。