北海道喉頭摘出者福祉団体 北鈴会

がんセンタ30


喉頭摘出患者に関する最近の治療


独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター頭頸部外科
医長 永橋 立望


 最近の治療としては、やはりロボット手術といわれる、通称ダヴィンチという手術機械が、当院を始め、北大、札幌医大などで導入されることです。


 現時点では、健康保険の適応が、泌尿器科手術に限られていますが、将来的には、喉頭がんの手術にも利用できるようになると思います。経口内視鏡やロボットハンドなどで3Dモニターやコンピューターを使用してのロボット手術が、喉頭がんでも欧米では、可能になっております。日本においては、耳鼻科分野で特別に本州の3施設で、行われていますが、厳密な規制が導入されているため、日本全国の病院で、喉頭がん手術に使用できるようになるのは、しばらく時間がかかります。でも、ごく近い将来、北海道でも、小さい傷でも大きく切除でき、音声嚥下機能を維持することが、ロボット手術で可能になると思います。


 昨年も、ご報告した早期発見を可能にするNBI(Narrow Band Imaging)内視鏡という最新の光学機器の最新型では、ファイバーの口径がより細くて画像が、ハイビジョンできれいになり、痛みが少なくて喉頭、咽頭癌などの早期病変の発見が容易に可能となっています。一般の内視鏡では、見つけられない病変がこのNBIでみると色が異なるため、はっきりわかるほどです。そのため比較的小さい病変で発見でき、小さな粘膜切除の手術で、傷も小さく、機能も温存することができるようになりました。


 喉頭完全摘出後の音声としては、食道発声が両手も自由に使えて、より自然の声で理想なのですが、皆様方もご存じのように、習得に時間を必要とします。
 現在では、食道発声法以外による音声の再獲得として、ボイスボタンを使用しての音声機能の回復手段があります。ボイスボタンは、片手で押さえる必要があったり、ある程度の期間で交換を要したり、時に唾液などの液体が気管に漏れたりするなど種々の問題もありますが、比較的容易に短時間で音声機能を獲得できます


 昨年ノーベル賞を受賞した細胞を利用しての再生医療も、日本では、京大を始めとして研究が盛んですので、今後の喉頭機能の温存、改善に利用できる日は近いと思います。