北海道喉頭摘出者福祉団体 北鈴会

熊井医師30


無喉頭と胃食道逆流症


旭川医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座臨床指導教授
医療法人社団くまいクリニック
理事長・院長 熊井 惠美

 最近、のどの違和感が気になって来られる方の中に、むねやけやげっぷの出方のひどい人がいます。これは、胃内容が、食道下部の逆流防止機構を超えて、食道内、更に咽喉頭にまで逆流することにより起こる症状で、胃食道逆流症と呼ばれています(GERD:gastroesophgealrefluxdisease)。原因は、下部食道括約筋の障害や食道裂孔ヘルニヤなどの病気によることもありますが、食べすぎ、早食い、高脂肪食、アルコール、喫煙、食べてすぐ寝る、などの生活習慣によることも多いようです。また、長期間飲んでいる狭心症治療薬、一部の高血圧治療薬には食道平滑筋を緩める作用のものがあり、気をつけなければなりません。
 食道炎症状(むねやけ、げっぷ、呑酸)が欠落しているか、極めて軽微で、咽喉頭異常感が顕著のものを、咽喉頭逆流症(LPRD:laryngopharyngealrefluxdisease)と呼び、更に、胃食道逆流症が咽喉頭異常感だけでなく、咳、中耳炎、副鼻腔炎、咽喉頭炎、音声障害、喉頭肉芽形成、喘息などの原因にもなるものを、胃食道逆流性耳鼻咽喉疾患(GEROD:gastroesophagealrefluxotolarygealdisease)と呼んで区別しています。

 喉頭の悪性腫瘍の原因として、喫煙が第一に挙げられますが、胃酸による慢性の粘膜に対する刺激も重要と考えられています。診断は、胃食道検査(電子スコープ)や食道内pH測定に加えて、耳鼻咽喉科医による咽喉頭ファイバー(または電子スコープ)が必要です。診断的治療として、胃酸分泌抑制薬プロトンポンプ阻害薬(PPI)を2週間服用して、症状の改善の程度をみる方法もあります。
 無喉頭の方の中には、最初から胃食道逆流症があった方や手術後になった方がいると思われます。放射線治療中や治療後にも、胃酸逆流の影響があった方もいるでしょう。食道発声が上達すればするほど胃酸の逆流は増えると思われます。
 胃酸逆流が、無喉頭の方の、しつこい咽頭の異常感、難治性咽頭痛、副鼻腔炎、繰り返す滲出性中耳炎などの原因のひとつになっているのは間違いありません。
 治療は、制酸剤や胃酸分泌抑制薬プロトンポンプ阻害薬(PPI)を8週間単位で継続服用することが必要です。就寝時、腰から上を少し挙上したり、横向きに寝る事や、生活習慣(食べすぎ、早食い、高脂肪食、アルコール、食べてすぐ寝る、など)を変えることも大切です。

 今年は、春がほとんど無く、一気に夏に成った為か、家庭菜園のキュウリが異常に生育しています。二苗しか植えてないのに、毎日4〜5本採れるために、夫婦2人の口には少々余り気味です。浅漬けや糠漬けなどの漬物にすると美味しいのは分かっているのですが、塩分の取りすぎになるので、躊躇しています。身体にやさしく、キュウリを無駄にしない優れたレシピをご存知の方は、どうぞお教え下さい。全身のクールダウンをしてくれるキュウリをたくさん食べて、暑い夏を元気に乗り切りましょう。