北海道喉頭摘出者福祉団体 北鈴会

医療大学今井29


「発声教室に参加して」


 北海道医療大学心理科学部言語聴覚療法学科
 今井 いのり


 北鈴会の皆様、こんにちは。私は北海道医療大学心理科学部言語聴覚療法学科で学んでいます。

私が北鈴会の門を叩いたのは、今年の4月のことでした。卒業研究のテーマに「食道発声」を選択した私は、食道発声を習得するにはどのようなことが行われているのか実際に自ら体験し、学びたいと思いました。そこで、同大学の西澤典子先生に北鈴会を紹介していただき、札幌支部で毎週日曜日に開かれている発声教室にお世話になることになりました。

当初、私の様に喉頭を摘出していない、普通に発声できる者が受け入れていただけるかとても不安でしたが、札幌支部の皆様はとてもあたたかく受け入れてくださったので、その不安はすぐに無くなりました。

 食道発声の訓練は、まず意図的にゲップを出せるようになることから始まりました。お茶を勢いよく「ゴクン!」と飲んで、息だけを出す。これが一見簡単なように見えて結構苦しく、タイミングをうまくつかまないと息だけを出すことができませんでした。

教室ではうまく出すことができなかったので、次の発声教室まで家で飲み物を飲むときは意識して息だけを出す練習や、ゲップが出そうになった時には出ても出なくても「あ」と言ってみる練習をしました。

教室では、「もっと口を大きく開けるときれいな音が出るよ」「肩の力を抜いて」など、いろいろなアドバイスを適宜いただくことができ、優しく教えていただきました。

 そして、練習を始めて8週間経ったぐらいで、「あいうえお」と1音ずつ出せるようになりました。現在は単音ではなく、「あ〜」と伸ばせるように練習をしていますが、なかなか難しいです。

今回、実際に訓練を受けてみて思うのは、「声が出せる」「人とおしゃべりができる」ということはとても素晴らしいことだということです。毎週教室に行くと、会員の方々がいつも楽しそうにおしゃべりをしていらしたことがとても印象に残っています。最近あったこと、趣味のこと、時には悩んでいることをいきいきと話していらっしゃる姿をみて、喉頭摘出により声を失った方が食道発声という第2の声を手に入れることによって、術後の生活をいきいきと過ごすことができるのだと感じました。

私は、今回学んだことを活かし、喉頭摘出された患者さんがまた声を出しおしゃべりを楽しんでいきいきと生活できるよう、サポートできる言語聴覚士になりたいと思っています。

最後に、ご指導してくださった北鈴会指導員の皆さん、受け入れてくださった教室の皆様、そしてご家族の皆様、本当にありがとうございました。