北海道喉頭摘出者福祉団体 北鈴会

医療大学29


北鈴会会員の皆様へ


北海道医療大学心理科学部言語聴覚療法学科
 教授 西澤 典子

 毎年「北の鈴」に投稿させていただいておりますが、本年は私の勤務致します北海道医療大学からの御礼を兼ねて御挨拶をさせていただきたいと思います。

本学は当別町とあいの里にキャンパスをおく医療系総合大学です。私は、あいの里にある心理科学部言語聴覚療法学科で2008年度から言語聴覚士の養成に携わっております。言語聴覚士(ST)とは、ことばを介した意志の疎通(コミュニケーション)にかかわる障害のすべてに対して、医学的な観点から治療を行う専門職のことです。

 言語聴覚士の業務の中には当然、喉頭摘出後の音声リハビリテーションも含まれるのですが、我が国において、医療面からの喉摘後音声リハビリテーションはまだまだシステム化されているとはいえない現状があります。理想的には、地域における喉頭摘出者福祉団体の活動と、病院における音声リハビリテーションが連携し、長期にわたる患者さんの障害のサポートを行っていく体勢が整うことが望まれます。

 私は、大学及び大学院教育の場において、喉頭摘出者のコミュニケーションの特殊性を理論的に解明し、合理的なリハビリテーションの方策を立てられるように学生の指導に当たってまいりましたが、最近になって、学生たちのなかから、積極的に無喉頭音声を研究テーマに取り上げ、これを学習していこうとする動きが出てきました。

 まず、新世代型の骨伝導マイクロホンを用いた発声支援装置に関する基礎研究が、大学院の修士論文として完成しました。研究者である前田は 大学院卒業後、本学助教として教育職に就き、言語聴覚士を目指す学生の指導に当たっております。発声支援装置の研究についても今後、西澤研究室と共同で推進していく予定です。

 また、大学の学生の中で、卒業論文のテーマに食道発声をえらび、実際に皆様の発声教室に通級させていただいたものがおります。学習を始めた当初は食道音声による発声ができるようになるという自信はとても持てなかったようですが、皆様のご指導によって、食道原音を獲得することができ、この体験を論文にまとめております。この学生の様な経験を積んだものが臨床に出てくれますと、病院における喉頭摘出直後の音声指導(退院前のベッドサイド指導)が非常に充実することが期待されます。

 いずれの研究も、北鈴会の皆様の絶大なご理解とご協力にささえられて完成したことを心から御礼申し上げます。

 私たちは医療の立場から、患者さんの治療とリハビリテーションに当たっておりますが、これは、病気の治療を一段落されたあとの地域における障害者コミュニティとの連携無しには成立しません.今後とも、貴会との協力を絶やすことなく、臨床に、教育に努めてまいりたいと思いますので、よろしくご協力をお願い致します。

 最後になりましたが、皆様のますますのご健康と、会のご発展を祈念致します。