北海道喉頭摘出者福祉団体 北鈴会

がんセンタ29


喉頭摘出患者に関する最近の治療


独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター頭頸部外科
医長 永橋 立望

 最近の治療としては、ここ数年で、大きな変化は無いようですが、機能温存、特に喉頭温存に対する治療がいろいろと試みられています。早期発見、手術という観点から述べてみます。

 早期発見を可能にするNBI(Narrow BandImaging)内視鏡という最新の光学機器では、喉頭、咽頭癌などの早期病変発見が容易に可能で、そのため比較的小さい病変部の局所的な粘膜切除の手術で、傷も小さく、機能も温存することができるようになりました。一般の内視鏡では、見つけられない病変がこのNBIでみるとはっきりわかるほどです。

 手術における喉頭摘出では、喉頭や声帯の部分切除の場合と完全摘出が必要な場合に分かれます。部分的な喉頭摘出という方法では、声の質はやや落ちますが、音声機能を維持できることができます。しかし、誤嚥などの発生もおおく、病気の進展範囲により、声の質の維持や口からの食事がむずかしくなり、なかなか日常生活に戻ることが、できないことがあります。

 喉頭完全摘出後の音声としては、食道発声が両手も自由に使えて、より自然の声で理想なのですが、皆様方もご存じのように、習得に時間を必要とします。現在では、食道発声法以外による音声の再獲得として、ボイスボタンを使用しての音声機能の回復手段があります。ボイスボタンは、片手で押さえる必要があったり、ある程度の期間で交換を要したり、時に唾液などの液体が気管に漏れたりするなど種々の問題もありますが、比較的容易に短時間で音声機能を獲得できます。

 最近では、ロボット手術といわれる、経口内視鏡やロボットハンドなどで3Dモニターやコンピューターを使用しての手術も欧米では、可能になっております。

 日本においても、導入されつつありますが、健康保険の承認などの法律上の問題もあり、喉頭がん手術に使用できるようになるのは、しばらく時間がかかりそうです。

 近い将来、より技術が発展すれば、小さい傷でも大きく切除でき、音声嚥下機能を維持することが、ロボット手術で可能になるかもしれません。

 また、iPS細胞などの再生医療の発展も今後の喉頭機能の温存、改善に期待ができると思います。