北海道喉頭摘出者福祉団体 北鈴会

旭川医大29


頭頸部外科と内視鏡

旭川医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座
 教授 原渕 保明


青空のまぶしい日々となりましたが、北鈴会の皆様におかれましては、ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。いよいよ北海道も夏本番を迎えますが、体調など崩されていないでしょうか。

さて喉頭癌をはじめとする頭頸部癌、特に進行した癌の治療は日々進歩しており、後遺症が残るような大きな手術はなるべく避け、機能をできるだけ温存する治療が検討されております。近年当科でも、機能温存や術後の皮膚瘢痕を可能な限り小さくする目的で、内視鏡を用いた低侵襲手術に取り組んでおりますので、この場を借りてご紹介したいと思います。

・内視鏡補助下甲状腺手術

前頸部に位置する甲状腺の疾患には甲状腺腫瘍(良性、癌)やバセドウ病、橋本病などがあり、比較的女性に多く発生します。通常の頸部皮膚切開による甲状腺手術では、術後の傷が常に露出し目立ってしまうことが問題でした。そこで我々は、鎖骨より下方に小さな切開を入れるのみで手術が可能な、内視鏡補助下頸部手術による甲状腺摘出術を2009年5月より導入しました。この手術により、頸部にいっさい手術の傷を作らずに甲状腺を摘出できるようになり、女性の患者さんをはじめ多くの方に満足いただいております。当初は良性の甲状腺腫のみを対象におこなっておりましたが、最近ではサイズの小さな甲状腺癌も適応に加えて手術をおこなっております。今後は他の頭頸部の腫瘍性疾患に対しても適応を広げてゆきたいと考えております。

・唾液腺内視鏡による唾石摘出術

唾液腺は唾液を作る組織で、耳下腺・顎下腺・舌下腺などがあります。唾液腺で作られた唾液は、導管を通って口腔内に送り出されます。唾液腺の内部や導管の中に石が発生することがあり、これを唾石症といいます。口腔内に近い導管にある唾石は、今までも口腔内に小切開を加えることで摘出が可能でしたが、唾液腺の中や比較的深部の導管にできた唾石は頸部に切開を入れなければ摘出することができませんでした。このため皮膚に手術の瘢痕が残ったり、近くを走行する顔面神経の麻痺などの後遺症が問題となっておりました。最近我々は、唾液腺導管の口腔内開口部から細い内視鏡を挿入し、唾石を確認してカテーテルやレーザーによって唾石を摘出する唾液腺内視鏡手術を導入しました。大きな合併症もなく、頸部に手術の傷も残さずに治療できることから、患者さんにも大変喜ばれております。

このように頭頸部外科に関する治療技術は日々進歩しております。我々は今後も頭頸部外科の進歩に少しでも貢献できるよう、微力ながら日々研鑽を積み重ねてゆきたいと存じます。最後になりましたが、北鈴会の皆様方のますますのご健康とご活躍をお祈りしております。