独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター
頭頸部外科医長 永橋 立望
喉頭摘出に至る疾患には、「喉頭がん」「下咽頭がん」が代表的です。
治療法としては、手術、放射線治療が以前から行われてきていますが最近では、放射線治療と抗がん剤の同時併用や、前後に投与する治療法で喉頭温存の可能性を高めることが可能となっています。しかし、100%の喉頭温存率ではないため、やはり喉頭摘出に至るケースもあります。摘出といっても、部分的ですむ場合や完全摘出が必要な場合に分かれます。
完全摘出では、発声機能の喪失をともないますが、食道発声法による音声の再獲得以外にも、ボイスボタンを使用しての音声機能の回復法があります。ボイスボタンは、手で押さえる必要があったり、ある程度の期間で交換を要したり、一部製造会社が撤退するなど、種々の問題もありますが、比較的容易に音声機能を獲得できます。
部分的喉頭摘出という方法では、声の質はやや落ちますが、音声機能を維持できることができます。ただし、腫瘍の進展範囲や、基礎体力などにより、むずかしいケースがあること、再発のケースでは、リハビリと体力の回復に時間がかかり入院期間が月単位で延長することなどがあり、いろいろと悩む点が多いのが実情です。
頸部からではなく口腔からの手術も、最新の機器をもちいて、以前より複雑な手術が可能となってきています。
咽頭癌などの早期発見を可能にするNBI(Narrow Band Imaging)内視鏡という最新の光学機器とともに、下咽頭癌などの早期病変の粘膜切除などの手術が行われて、傷も小さく、機能も温存することができています。一般の光学機器では、見つけられない病変がこのNBIでみるとはっきり判りますので、病変が小さければ、早期発見となり治療成績の改善が望め、喉頭摘出を避けることが可能です。また、ロボット手術といわれる、経口内視鏡やロボットハンドなどを利用した最新技術も開発途中ですので、近い将来、小さい傷でも大きく切除でき、音声嚥下機能を維持することが、可能になるでしょう。
最近は、患者さんご本人とご家族に、可能な治療方針の中から選択をしていただくのですが、よくご検討のうえ、決めていただければと思っております。