北海道喉頭摘出者福祉団体 北鈴会

熊井医師28


自然と共に


旭川医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座臨床指導教授
医療法人社団くまいクリニック
理事長・院長 熊井 惠美


 今年の北海道のシラカンバ花粉症は、花粉飛散量の増加と雨が少なかったことで、症状が強烈に出た患者さんが多く、初めて花粉症になったといって来られる方が多くみられました。鼻症状に加え、眼症状や咳などの咽喉頭症状が多かったという印象です。花粉症の治療は、症状が起こってから始める治療と花粉飛散前から行う初期(季節前)治療があります。後者は花粉飛散の2から4週前から内服薬(抗ロイコトリエン剤など)、鼻噴霧剤、鼻内レーザー手術などを行う方法で、花粉飛散中もほとんど症状無く過ごす事ができます。一度、季節前治療を経験すると、花粉飛散季節が爽快に過ごせるために、毎年、この治療を希望される患者様の数が増えています。今年も大量花粉飛散にもかかわらず季節前治療を行った方々は、例年と変わり無く余裕の様子でした。ちなみにシラカンバ花粉症の方は根雪が融ける頃から治療を始めると効果的です。無喉頭の皆様の中にも花粉症の方がいらっしゃいます。花粉の飛ぶ季節になり、眼がかゆく涙が出る、鼻がむずむずして鼻水が出る、いつもより咳が出やすくなるなどは花粉症の症状です。症状に合わせた対症療法は必要ですが、毎年症状が起こる方は季節前からの初期治療をお勧めします。

 朝、鳥のさえずりと共に起き、風の音に耳を澄ませ、額に汗して日々を暮らし、休みには日光浴をしながら終日釣り糸を垂らし、釣れた魚を酒肴として一杯やる。スローフード、スローライフ。それも水のきれいな北海道、安心して暮らせる日本国があればこそです。今の環境を次世代へ継承できるように真剣に考えなければいけない時が来ています。

 雨上がりの下水口の周りや海を黄色く染めた松やシラカンバの花粉。今年の春、樹木花粉が大量に飛散したのも自然が変化している証かもしれません。花粉症は人間の英知で何とか制御可能な域に近づいていますが、自然は人間の自由にはなりません。我々のできることは自然破壊を最小限に防ぎ、自然と共に生きていくことです。自然をあるがままに受け入れ、自然に生かされていると日々感じながら、地球上の一構成員として何ができるか、何をしなければいけないかを共に考えていきたいものです。